2020年6月10日水曜日

九龍の「村」で早茶を 【牛池湾村探訪1】


 牛池湾村というところに獅子山が見える茶楼がある--ネットでそんな情報を知り、初めて早茶をしにいったのは17年5月のこと。ちょうど同時期に香港を旅していた友人を誘った。
 牛池湾村は東九龍エリアに残る数少ない村の一つだ。同じく東九龍エリアの茶果嶺村、竹園聯合村と共に再開発地域に指定され、いずれ「消失」することが決まっているという。

 「村」はMTR虹彩駅のすぐ近く、九龍サイドの 古くからの団地エリアにあった。駅出口前は幹線道路のルート7が走り、周囲に高層マンションや公共団地群がそびえる。やや無味乾燥だが、とても香港的な風景である。
 だがしかし。
 こんなところに村が?という感じだ。普通に九龍のちょっととっつきのわるい住宅地という感じで、高層ビルがそびえる風景にはどこにも「村」の匂いはしない。
 しかし地図を見ると、牛池湾村はすぐ近くにあるはず。半信半疑なまま、出口のすぐ横にある細い道を通ると、その先に狭そうな路地が見えてくる。
 路地に入ると、そこはいきなり「村」だった。
 狭い通りに、理髪店やら日常雑貨店やらなんだかレトロな商店がずらり並び、朝9時だというのにざわざわと人がいて、そぞろ歩きつつ買い物している。
 突然,別の世界にワープしたかのよう。
 『少林サッカー』に登場する村にでも迷い込んだ気分だ。
 どうやらここが牛池灣村のメインストリート「龍池径」らしい。
 遠く(西北方面)を眺めると獅子山がうっすらと見える!(天気がいまひとつよくなかったのだ)
 村のメインストリートに並ぶ小さな商店に朝からやってきて野菜や魚や肉や日常雑貨をあれこれチェックするご近所の人たち。まさに「獅子山下」の世界である。



朝9時ごろ地下鉄駅から突如郷愁あふれる村の商店街にワープ





 70年代初頭の香港にタイムスリップした気持ちになりながら、龍池径でも存在感を放つ茶樓「新龍城茶樓」へ。屋内のちゃんとした客席もあるのだが、店先にバラック風な屋根付きテラス席が用意され、大勢のお客がテラス席でわいわいがやがやと早茶をしてる。このテラス席がけっこう長い。端っこのほうは鳥かごも一つ吊るされていた。郷愁あふれる風景。香港の30代、40代に見せれば「懐かしい!」という声が上がりそうだ。
 ということで当然私たちもテラス席へ。
 



店先(テラス席奥)には蒸し中の蒸籠がずらり


 お茶はセルフサービス。テラス奥に用意された急須にお茶を入れ、給湯コーナーで湯を注いで席へ。點心はお店入口前テラス席奥で勢いよく蒸されている蒸籠の数々から選ぶというシステムだ。友人とあれこれゲットしてはテーブルに並べる。狩猟本能を満足させられるひと時。
 むぐむぐと點心をほおばる私たちの向かいには、おばあちゃんがお茶をすすりつつアンニュイに新聞を読んでいる。點心はもう食べてしまったようだ。こちらには全く無関心という風だが、「ありゃ!物好きな日本人観光客が来てるよ!」と思いながら一瞥しては鋭い観察眼を駆使していることは間違いない。
 テラス席は一人客、二人客も多い。
 9時は早茶としてはすでる終盤だが、茶樓はかなり混んでいた。老人客が多いけれど、もっと若い人たちもけっこう混ざっている。牛池湾村の住民だけでなく、ご近所には彩虹邨、坪石邨といった比較的大きな屋邨もあるから、そこの住民もこの郷愁ある村の茶樓に早茶を食べにやってくるのかもしれない。



 早茶ピーク時の7時ごろに行ったら、この地域いったいのお年寄りでたいそうな賑わいを見せていたかも。
 ちなみに點心はやや大ぶり、定番のものが中心でしみじみ美味しかった。
 帰り際、支払いをしていたらお店のお姐さんから「日本人?」と尋ねられ、「サヨナラ、ありがとー」と明るく送り出されたのであった(やはり、さりげなく皆様から観察されていた私たち)。

 なお、1年後、別の友人4人で再訪したときにはお姐さんの日本語の語彙がかなり増えていたのであった。

村のすぐ先には高層マンションが

村の入り口にある理髪店








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